相続について

「相続登記の流れ」はこちら

 

相続の基本

相続とは?
  人が亡くなると故人の財産は、配偶者や子供達などに引き継がれます。この財産の引継ぎのことを相続と言います。
 相続に関する用語は次のようなものがあります。
・被相続人→亡くなった人。
・相続人→亡くなった人の配偶者や子など。相続する人。
・相続財産→被相続人の死亡時の財産。つまり、遺産。
・法定相続分→民法で定められた、相続人が相続する割合。原則的な割合であり、修正される可能性がある。
・代襲相続→被相続人の子が被相続人より先に死亡している場合、子が相続すべき相続分を子の子(孫)が相続すること。被相続人の兄弟が被相続人より先に死亡している場合、兄弟が相続すべき相続分を兄弟の子(甥・姪)が相続すること。
・遺産分割協議→相続財産をどのように相続人間で分配するかを決定する話合い

相続財産とは?
 相続財産には、現金や預貯金、株式などの有価証券、故人が受取人の生命保険金、不動産などのプラスの財産だけではなく、借金や保証債務などマイナスの財産も含まれます。
 なお、相続人のうち特定の人を受取人として指定した生命保険は、相続財産とされませんが、税務上は相続財産とみなされます。つまり、相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の対象となるのですが、非課税枠(500万円×法定相続人数)内であれば相続税の対象となりません。

相続人は?
 相続人となる人は、民法で決められています。
★常に相続人 配偶者
 配偶者がいる場合は、次の各順位の人と一緒に常に相続人となります。
★第1順位  子 (子が故人よりも前に亡くなっている場合は孫・・・)
★第2順位  直系尊属(父母。父母が故人よりも前に亡くなっている場合は祖父母)
なお、養親も実親と同じ相続分を有します。
★第3順位  兄弟姉妹(兄弟姉妹が故人よりも前に亡くなっている場合は甥・姪)

※故人の配偶者が先に亡くなっている場合に、その配偶者の連れ子が故人(連れ子の継父又は継母)の相続財産を代襲相続をすることは認められていません。

法定相続分は?
 法定相続分(原則的な相続の割合)も、民法で決められています。

★配偶者と子が相続人の場合
  配偶者1/2 子1/2
  子が数人いるときは等分
  例)配偶者と子2人
    配偶者1/2 子1/4ずつ

★配偶者と直系尊属が相続人の場合
  配偶者2/3 直系尊属1/3
  直系尊属が数人いるときは等分

★配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
  配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
  兄弟姉妹が数人いるときは等分

 なお、民法に定める法定相続分は、一応の基準であり修正される可能性があります。
 遺産分割協議においては、必ずこの法定相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

※故人が遺言を残していた場合は、原則として遺言の内容に従って相続手続などを行うことになります。
 遺言により、法定相続分とは違う割合で相続をさせたり、相続人以外の人に財産を残したり(遺贈)することができます。
 遺言については、こちらをご覧下さい。

事実婚・内縁の配偶者の場合
 法律上の婚姻関係にない配偶者には、法律上の相続権がありません。そのため、故人が遺言等を残していない場合には、相続財産を受け取る権利がありません。よって、相続に備えてしかるべき対応を取っておく必要性が高いといえます。
 なお、すべての相続人が相続放棄するなど、法律上の相続人が存在しない場合には、相続財産は最終的に国庫に帰属します。相続人が存在しない場合、事実婚・内縁の配偶者は特別縁故者として、家庭裁判所に対して相続財産の分与請求をすることができます。


預貯金の相続手続について

 金融機関は、預貯金口座の名義人が死亡したことを知った時点で、その口座を凍結します。
 よって、相続人は、預貯金口座の名義変更又は解約などの手続きをする必要があります。
 その手続きは、金融機関によって異なりますので、必要な書類などは金融機関に問い合わせる必要があります。

 金融機関では、残高の開示・照会請求ができます。金融機関によって様式は異なりますが、ゆうちょ銀行の場合は、「貯金等照会書」に必要事項を記入し調査請求すると、結果を文書で回答してくれます。この開示請求は、相続人の1人から行うことができます。

〈預貯金口座の相続手続に必要な書類〉

一般的に必要なもの
①遺言がない場合
・相続手続依頼書
産分割協議の有無に関係なく法定相続人全員の署名及び実印押印が必要な金融機関と、遺産分割協議により相続することになった方のみの署名及び実印押印でよい金融機関があります。
・亡くなられた口座名義人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本など
・相続人の戸籍
・相続人全員の印鑑証明書
・協議が成立している場合は、遺産分割協議書
・通帳など
・手続を行う代表相続人の本人確認ができるもの

②遺言がある場合
・相続手続依頼書
・遺言書
・亡くなられた口座名義人の除籍謄本
・財産をもらう方の印鑑証明書
・通帳など
・手続を行う方の本人確認ができるもの

以上のほか、必要な書類がある場合がありますので、あらかじめご確認下さい。
この金融機関での相続手続は、待たされる時間がかなり長くなることが多いです。ある程度時間の余裕があるときに行かれることをお勧めします。

当事務所では、煩わしい手続がスムーズに進むようお手伝い致します。
お気軽にご相談下さい。

法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から、全国の法務局において、各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」がスタートしました。
 法定相続情報証明制度は、法務局に戸籍除籍謄本等の束を提出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付するというものです。

 銀行などにおける相続手続をする場合、銀行ごとに戸籍除籍謄本等の束を出す必要がありますが、この制度を利用することにより法務局から交付される「法定相続情報一覧図の写し」を戸籍除籍謄本等の束の代わりに出すことができるというものです。

 この申出の手続は、当事務所で代理できます。

  法定相続情報証明制度のパンフレット

故人に債務がある場合の注意点

 故人に借金などの債務がある場合、債務も相続しますから、プラス財産よりもマイナス財産の方が多いような場合は、相続放棄をするかどうか早急に検討する必要があります。

相続放棄は次のことに注意する必要があります。

1.相続放棄は家庭裁判所での手続きです。
2.手続きができる期限があります。
3.相続財産を処分してしまうと相続放棄できなくなる場合があります。

相続放棄について

・相続放棄をした人は、その相続に関して、初めから相続人とならなかったものとみなされます。よって、相続財産を一切相続しないことになります。
・相続放棄しようとする人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にその旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。
・先順位の相続人が全員相続放棄した場合、次の順位の人が相続人になります。

〔相続人の順位〕
☆常に配偶者は相続人
☆第1順位 子(子が被相続人より先に死亡→代襲相続)
☆第2順位 父母(父母が被相続人より先に死亡の場合は祖父母…)
☆第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が被相続人より先に死亡→代襲相続)  

 例えば、相続人である子が3人いる場合、その内1人が相続放棄すると残り2人が相続することになり、次の順位の人が相続人になるということはありません。また、子が相続放棄した場合、その子(孫)が相続人になるということはありません。
 
 第1順位の相続人が全員相続放棄すると、第2順位の人が相続人となり、さらに、第2順位の相続人が全員相続放棄すると第3順位の人が相続人となるということです。

相続放棄の手続のまとめ

申述人 相続人
申述期間 自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内
申述先 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
申述費用 収入印紙800円分 郵便切手
必要書類 相続放棄の申述書
被相続人の住民票除票又は戸籍の附票 
申述人(放棄する人)の戸籍謄本 
被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本、被相続人との相続関係を証する戸籍・除籍謄本など

 

限定承認とは?

 これまで、相続が開始した場合に、単純承認(すべてを相続する一般的な相続のこと)と、すべてを相続しない相続放棄について記載しましたが、相続人はもう一つ選択する方法があります。
 それは、限定承認というもので、故人が残した相続財産について、プラスの相続財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐというものです。
共同相続人全員で、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所において手続することが必要です。
故人の債務がどの程度あるか不明であり、プラスの相続財産が残る可能性がある場合などに検討されます。
 選択すべきかどうか迷う場合は、専門家へ相談されたほうが良いと思います。

相続を放置してはダメ!!

 すでに発生した相続を放置して、良い方に転ぶことは、ほとんど有りません。
100パーセント無いとまでは言いませんが、100パーセントに近い確率で良いことは無いと思います。
 なぜかと言いますと、時間が経つにつれて相続人が増えていくのが通常だからです。なおかつ、相続人が増えていくに従って、縁遠い相続人が増えていきます。遺産分割協議を進める上で、相続人が多いことと縁遠い相続人が多いことは、大きな負担になります。結果、費用も時間も多くかかってしまうことになります。中には、相続を諦めてしまう方もいらっしゃるようです。

 国や地方自治体などの事業においても、相続がされていないことによって支障が生じています。
 ですから、相続が発生した場合は、早めに処理されることをお勧めします。