株式管理

中小企業の経営者の方々へ

 株式管理は、株式会社の基盤となる事務手続きであり、会社の経営安定を脅かすリスクへの対策です。事業承継・M&Aの前提としても不可欠です。しかし、会社法等に基づき株式管理を適切に行うことは簡単ではありません。そして、当事務所のようなサービスを専門的に行う所は他には見当たりません。法律関係者でも専門的に取り扱っている資格者は皆無と言える状態です。
 当事務所は、株式管理に関する業務を専門的に誠実に行います。かつ、各会社の実情に最も適した形で対応致します。各会社の、株主や後継者などの問題や、現状や将来のリスクなど、各会社独自の様々な課題を念頭に対応致します。すべての業務は司法書士兼行政書士である代表者が管理し、補助者に任せっきりにすることはありません。

「定款の整備、株主名簿・株式取扱規程・株式譲渡契約書・株式譲渡承認議事録の作成、株券発行会社への変更、その他株式関連手続の整備」など、顧客会社に最適な対応方法を提案致します。また、株式管理に関するあらゆるご質問に無料で回答致します。
 つまり、当事務所のサービスは、株主への対応や株式の管理に将来不安を感じていらっしゃる経営者の方には、将来リスクを最小限にする最適なサービスと言えます。

 事前に、対応策と費用見積を提案し、承認を頂いた後に着手致します。費用は、事務手続総量を勘案し妥当な額と致します。
 従いまして、当事務所のサービスを受けることによる費用負担額は、株式管理を怠った末のトラブル処理に要する費用額より、はるかに少額になると思われます。

※株式管理については、全国対応致します。

以下、中小企業で株式譲渡制限がある会社について記述します。

1.株式管理の重要性を認識していますか?

株主は株式議決権によって会社経営に関与します。取締役等の選任・合併・会社分割・解散など、会社の基本的方針を決定するのは株主総会で、その株主総会で株式議決権を行使するのが株主です。ですから株主は会社を所有し支配しています。
経営者が株式を100%持っている状態なら、経営者は自由に方針を決定できます。しかし、人間には寿命がありますから誰も永遠に株式を持つことはできません。相続によって株式が分散する可能性があります。

中小企業では、親族や友人・知人などが株主である場合が多いようです。経営に協力的な株主なら良いですが、すべての株主がいつまでも協力的とは限りません。また相続によって株式が分散したり、会社とは全く関係のない子などが株主となるリスクもあります。退任や退職後の元役職員が株主である場合も同様のリスクがあります。名義貸株主や所在不明株主の存在も対処すべき問題です。

会社法上は、持株比率等によって株主に様々な権利が与えられていますから、株主は持ち株数が少なくても無視できない存在です。「経営を安定させること」と「会社を継続的に発展させること」は、会社経営者にとっての最重要課題ですが、株式に絡む紛争が発生した場合、会社経営を根底から揺るがす大きな問題に発展する可能性があります。

現在においては、コンプライアンス(法令遵守)は当然のことであり、国民の権利意識の高まりを考慮しても、法令に基づいて適切に株式管理を行うことは重要な経営課題だと思われます。株式管理を適切に行い株式の分散防止に努めることによって、経営を安定させ後継者への円滑な事業承継に繋げるべきです。

中小企業の経営者は、株式に関する問題を意識することはほとんどないのが実情です。リスクは存在しても、問題として顕在化しないうちは表面上問題ゼロだからです。しかし、株式に関するトラブルは突然起こる可能性がありますので、早めに対処しておくべきです。
 事業承継の前提として株式管理は重要ですし、M&Aにおいては株式管理がしっかりしていないと頓挫してしまう可能性があります。問題のない状況において早めに着手し、先延ばししないことを肝に銘じる必要があります。

2.株式譲渡制限は、相続には無関係であることをご存じですか?

ほとんどの中小企業は株式譲渡制限を設けています。株式譲渡制限とは、「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。」とか「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。」というような規定です。これは定款に規定されていて、かつ登記事項ですから登記事項証明書にその旨記載されています。
これはご存知のとおり、株式会社に好ましくない株主が入ることを防ぐために設けられています。この規定によって、好ましくない人物が株主になることを防いで、経営安定に寄与することが狙いです。ただ、この規定は株主の相続には全く関与しません。つまり、相続によって好ましくない人物が株主になることは、この規定では防げないということです。「うちは譲渡制限があるから大丈夫!」などと考えていてはいけません。
株式を分散させないことによって経営を安定させるべきですので、株主の相続については事前に対策を検討しておく必要があります。
なお特別な事情がない限り、株式譲渡制限がない会社は早急に設定すべきだと思います。

3.あなたの会社の株主で死亡した人はいませんか?
  株式の相続手続は適切にされていますか?

株主が死亡すると、その株主が所有していた株式は、通常は相続によって相続人のものとなります。ただ、複数の相続人がいる場合は、遺言や遺産分割協議などがなければ複数相続人の共有になります。この共有は全株式につき共有ということです。例えば、1000株を相続人である子2人が相続して、遺言も遺産分割協議も無い場合は、2分の1ずつ共有の株式が1000株あるということであり、決して500株ずつ持っているということではありません。500株ずつ持っていれば500株ずつの単有であり、共有ではありません。
株式が共有されている場合は原則として、共有者は権利行使者1人を定め、会社に対しその者の氏名又は名称を通知しなければ、その権利を行使することができません。
不動産の相続の場合、共有をできるだけ避けるように遺産分割協議などを行い、後の権利関係を簡単にして、相続人の利用・処分をし易くするのが通常です。それと同様に株式についても共有を避けた方が、会社と相続人の両方にとって好ましいだろうと思います。
会社としては、遺産分割協議などの相続手続を進めて頂いて、株主名簿の書換を早めに終了して貰いたいところです。そういう意味で会社としては、できるだけ株主の死亡を把握して相続手続の進捗にも関心を持つべきでしょう。
ただ、株主に相続が発生すると株主が多くなってしまう可能性があります。株主が多いということは会社に対する権利者が多いと言うことであり、何かとトラブルになる可能性がありますし、株主管理が大変になります。株式の分散は、会社としては極力避けるべきです。また、死亡した株主は会社経営に協力的であっても、その相続人が協力的であるとは限りません。そんなリスクへの対策として、相続人に対する売渡請求があります。

4.相続人に対する売渡請求をご存知ですか?

極めて簡単に説明します。
株式会社は、相続などにより譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款に定めることができます。株式譲渡制限では、株式の譲渡に関しては制限を加えることができても相続などに制限を設けることはできませんが、定款変更してこの規定を定めれば、相続など一般承継によって取得した者に会社から売渡請求をすることができます。ただし、当該会社が相続などがあったことを知ったときから1年以内であることが必要ですし、自己株式の取得ですから分配可能額を限度とする財源規制があります。

5.あなたの会社の株式譲渡は適切にされていますか?

株式譲渡制限がある場合の株式譲渡の手続は以下のようになります。株券発行会社かどうかで手続が異なります。
まず株券発行会社とは、「当会社の株式については、株券を発行する」という登記がされた会社です。実際に株券を発行しているかどうかは関係ありません。株券不発行会社は、そのような登記がされていない会社です。

まず前提として、株式譲渡制限会社は譲渡についての承認が必要です。
通常は譲渡契約前に承認請求をするので、そのパターンで記載します。譲渡契約後の承認請求も可能です。

・株券発行会社の場合

 株券発行会社での株式譲渡手続は次のとおりです。
① 株主が譲受人の氏名等を明示して、会社に対し譲渡承認請求をする。
② 会社が、その株式について譲渡を承認する。
③ 株主(譲渡人)と譲受人が譲渡契約を締結する。
④ 譲渡人と譲受人が共同して、会社に対し株主名簿の書換えを請求する。

株式を有効に譲渡するためには、売買や贈与などの意思表示だけで充分です。会社と会社以外の第三者に対する対抗要件は株主名簿の書き換えです(会社法130条1項)。対抗要件であるということは、会社等に対して株主であることを主張するためには、株主名簿の書き換えが必要であるということです。

・株券発行会社の場合

 上記「株券発行会社の場合」との違いは次のとおりです。
・株主が会社に対して株券発行を請求する。
・会社が株券を株主に対して発行する。
・株主(譲渡人)が譲受人に対して株券を交付する。
・譲受人は株券を会社に提示して株主名簿の書換えを請求する。

株式を有効に譲渡するためには、売買や贈与などの意思表示が必要であることは当然ですが、加えて株券の交付が必要です。ですから株券が発行されていない場合には、会社に対して株券の交付請求をする必要があります。会社に対する対抗要件は株主名簿の書き換えです(会社法130条2項)。

譲渡の手続は以上のとおりですが、会社や第三者に対する対抗要件を考えると、株主名簿の名義書換が重要であることが分かります。ですから株主名簿を作成し管理することは大切なことです。

また、株式譲渡制限がない会社は、早急に譲渡制限を設けるべきです。そうしないと、会社にとって好ましくない人物が株主になることを防げないことになります。

6.あなたの会社は株券発行会社ですか?
  それとも株券発行会社ですか?

株券発行会社と株券発行会社との見分け方

株券発行会社は、「当会社の株式については、株券を発行する」との登記がされている会社です。株券発行会社には、このような登記がありません。会社の登記事項証明書を見れば簡単に判ります。株券発行会社は、実際に株券を発行している会社ということではありません。ほとんどの株券発行会社は、実際には株券を発行していないと思います。

さて、会社法施行日(平成18年5月1日)より前から存在していた会社は、一部の例外を除いて、株券発行会社です。なぜかと言うと、会社法施行以前の法律では、株式会社は株券を発行することが原則だったからです。当時の普通の株式会社つまり株券発行会社が、定款変更せずにそのままだと現在でも株券発行会社です。ですから一部の例外を除いて、平成18年5月1日以前から存在している会社は、株券発行会社だということです。

《注》株式の発行と株券の発行は意味が違います。

両会社の株式譲渡における違い

株式譲渡制限を考慮せずに簡単に記載しますと、株券発行会社は譲渡人と譲受人の意志の合致だけで効力が生じます。つまり契約だけで有効です。しかし株券発行会社では、譲渡人と譲受人の意志の合致にプラスして株券の交付が必要です。契約だけでは効力は発生しません。ですから実際には株券を発行していない株券発行会社では、株式の譲渡の前提として株券の発行が必要になります。

会社法128条1項本文に、「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。」と規定してあります。ですから、株式を売買したり贈与したりする場合に、株券を交付しないと売買や贈与は無効です。実際は、株券発行会社なのに株券を発行していない会社は沢山あります。そういう会社の株主が、契約だけで株式の譲渡をすると問題が生じます。

会社の承継で株式を後継者に譲渡する場合や、第三者に株式を売却する場合などに注意する必要があります。以前の譲渡が無効だったなどということがないように、早めに対策を考えるべきです。

上記のとおり、平成18年5月1日以前から存在している会社の多くは株券発行会社です。そして、中小企業でも株式の評価が高額になる会社は沢山あると思います。株式は重要な財産ですから、その譲渡が無効にならないようにすべきです。

ちなみに、相続は譲渡ではないので関係ありません。

株券発行会社と株券発行会社のどちらを選択すべきか

結論から言いますと、株券発行会社にすべきだと思います。

株券発行会社には以下のようなデメリットがあります。

◎株券の発行に費用を要する。
◎株主は株券を保管する必要がある。
◎株券の紛失・盗難の恐れがある。
◎株式の譲渡に株券の交付が必要であることを、関係者全員が失念する可能性がある。
◎株券の善意取得、株券失効制度、株券の発行時期・株券の効力発生時期、株券不所持制度など考慮すべき事項が多い。


これに加えて

・現在の会社法では株券発行が原則である。
・上場会社は株券発行会社である。

ので、株券は世の中から消えていく運命です。

以上のようなことから、実際には株券を発行していない株券発行会社が多いのですが、そういう会社は法律上も株券発行会社にする方がいいと思います。株券発行会社には、上記のデメリットがありません。株主名簿を整備する必要がありますが、それは株券発行会社も同じです。

株券発行会社を株券発行会社にする方法は、定款変更がまず必要で、あとは株券を発行しているかどうかで手続が違ってきます。そして、「当会社の株式については、株券を発行する」と記載されている登記を廃止します。あとは株主名簿を整備し管理すればよいことになります。

 ちなみに株券発行会社では、株主から請求があれば、株主名簿記載事項を記載した書面を交付しなければならないので、株券が無くても株主であることの証明は簡単です。

7.あなたの会社の株主に名義貸株主はいませんか?

現在は株式会社設立の際に発起人は1人でも構いませんが、以前は発起人が7人以上必要でした。その頃設立した株式会社では、名義だけ発起人になる人がよくいました。発起人は株主ですから、つまり名義だけ株主の人がかなりいたということです。これが名義貸株主が生じた典型例ですが、その他にも名義貸株主が生じる可能性はあります。

名義貸株主を放っておくと、その相続人から所有権を主張されるなど、トラブルになる可能性があります。ですから名義貸株主については、できるだけ早急に解消すべきです。実際の経緯が分かっている当事者なら解決が容易でも、当事者が死亡すると相続人との間で解決しなければならず、相続人が全く事情を知らないと解決が困難になります。また、名義貸株主の解消に当たっては税務面にも配慮する必要があります。
 現在はトラブル無しでも、いずれ大きなトラブルになる可能性があるのが名義貸株主の問題です。将来の経営安定のために、早めに解決に着手すべきだと思います。

8.あなたの会社の株主に所在不明株主はいませんか?

 所在不明株主とは、株主の所在が分からず株主総会開催などの通知ができない株主のことです。突然現れて株主の権利を主張されるなど、トラブルの原因になる可能性があります。
 また、持ち株数が少ないので通常の経営課題には支障が無くても、全株主の同意が必要な場合は株主総会決議ができない事態になります。M&Aにおいては、100%の株式取得に支障が生じて頓挫する可能性もあります。

 解決方法の1つとして、会社法197条198条に規定があります。
・その株主に対して5年以上継続して通知または催告が到達しない。
・その株主が継続して5年間剰余金の配当を受領していない。
・その他の要件
を満たした場合に競売等ができるというものです。
会社の状況によっては、他の方法も検討する余地があります。

 いずれにしても所在不明株主はトラブルの原因ですから、早めに対応すべきです。

9.あなたの会社は株主名簿を適切に備えていますか?

株主名簿は株式管理の基本

株主名簿の整備は法律上の義務ですし、整備しておかないと株主とのトラブルになりかねません。株券発行会社は、株券を発行しないので、株主名簿が唯一の株主の証明になるからです。そういう意味で昔より株主名簿の重要性は増したと言えます。
 また、株券発行会社の株主は、株券によって株主であることを簡単に証明することができないので、会社に対して株主名簿記載事項を記載した書面の交付を請求することができます。この書面を交付するためにも株主名簿は重要です。

株式管理は経営安定の基本

経営者は株式管理を適切に行い、株式の分散防止に努めることによって、経営を安定させる必要があります。株式管理のためには、株主名簿の整備が肝要です。株主名簿によって株式・株主を管理すべきです。

いままでに記載してきたように、株式の相続・株式譲渡・株券発行会社への移行・名義貸株主・所在不明株主など株式に関する問題は沢山ありますが、それらの問題を管理しトラブルを最小限に抑えるためには株主名簿の整備が不可欠です。そして、株主名簿を整備する前提として重要なものが定款や株式取扱規程ですので、それらも同時に整備する必要があります。

株主名簿の作成

さて株主名簿の作成方法ですが、様式は決められていないようですので、法律(会社法121条など)で定められた事項を漏れなく記載すれば良いことになります。

記載事項の概略は次のとおりです。

 ・株主の氏名又は名称及び住所
 ・株主の有する株式の数
 ・株式を取得した日
 ・株券の番号(株券発行会社で株券が発行されている場合)
 ・その他質権に関する事項など

 次に株式取扱規程ですが、これは株主名簿の書換やその他の事項などを規定して、株式の管理を行うルールです。株主名簿を作成しても、名義書換の方法や株主名簿の管理方法が明確に決められていないと、株主名簿自体に信頼性がありません。「誰かが勝手に書き換えた」などということでは困ってしまいます。株主名簿の信頼性を高め保持するために規定する必要があります。具体的な内容は、会社の実情に応じて決定すべきと考えます。

10.あなたの会社は株式管理を適切に行っていますか?

 発起人が7人以上必要だった頃に設立された会社で、株式管理をほとんどしていないと、一部の株主の所在や生死が不明だったりします。創業者が死亡していると、持ち株数もはっきりしないこともあり得ます。こうなると会社の体をなさないことになり、会社継続は困難になります。
 ある程度確固たる営業をしている会社では、これ程のことは無いでしょうが、株式管理が注目されない背景には経営者の株式に対する認識不足があると思います。

株式会社の最高意志決定機関は株主総会です。その構成員は株主であり、株主は原則として株式数に応じて議決権を有します。よって、会社の最重要事項を決定するのは株主ですので、株主が会社を支配しています。実際は一定数以上を持つ大株主が支配しますが、少数の株式しか持たない少数株主でも議決権を有し発言権を有しています。つまり、株主は会社経営者の経営方針に対し直接意見を言える立場です。会社の最高意志決定機関における権利ですから、雇用関係にある従業者などの権利とは根本的に権利の強さが違います。
 また、会社法には数多くの手続規定が定められていますし、株主には総会議決権以外にも、帳簿閲覧権・株主総会招集請求権など会社法上様々な権利が認められています。経営者に批判的な株主がその気になれば、トラブルの種はいくらでもあると言っても過言ではありません。

株式を持つことによって、これらの強力な権利を行使できるのが株主ですから、株式管理が株式会社にとって如何に大切であるかは明白です。そして、トラブルは突然発生する可能性がありますから、平穏なときから早めに対策を講じてリスクを小さくしておくことが肝要であると思います。

株式管理の要点

・定款を整備管理する。
・株主名簿を整備管理する。同時に株式取扱規程も整備する。
・株式に関する手続等を会社法等に基づき実施する。
・株主が多くなると、何かとトラブルになる可能性が多くなるので、株式管理を適切に行い株式の分散防止に努める。
・必要に応じて印鑑登録も検討する。