Q1.会社法改正前からの株式会社をそのままにしていて不都合はないか?

A:ほとんどの会社は株券発行会社ですので、株式の譲渡について問題が発生する可能性があります。
よって、株券発行会社にした方がいいと思います。(Q2~4参照)
また、取締役会設置会社であり、かつ監査役設置会社ですので、会社によっては、それらを検討することも必要です。

(説明)
現在の会社法は、平成18年5月1日に新たに施行された法律です。以前は商法等に会社について規定されていましたが、大きく改正され新しく会社法となりました。
ところで、平成18年5月1日より以前から株式会社であった会社は、登記をそのままにしておくと
 ①株券発行会社(Q2参照)
 ②取締役会設置会社
 ③監査役設置会社
ということになります。
登記事項証明書を見ると、
 ①は、「当会社の株式については、株券を発行する」
 ②は、「取締役会設置会社」
 ③は、「監査役設置会社」
と記載してあります。
これは旧商法の株式会社が、上記①②③を前提にしていたからです。旧商法の株式会社は、株券を発行するのが原則であり、取締役会と監査役が必ず置かれていました。ですから旧商法に基づいて設立された株式会社が、何も変更することなく、そのままにしておくと以上のような会社ということになります。

さて、そのままにしていて何か問題があるのでしょうか?

①については、創業者株主が株式を譲渡することもなく事業承継もせずに廃業するという会社ならば、特に問題はないと思いますが、それ以外の会社では問題になる可能性があります。
どういう問題かというと、
Ⅰ.株券を発行しないといけない事態があり得る。
Ⅱ.株式を譲渡するには株券を交付しないと効力が生じない。(Q3参照)
ということです。
株券を交付しないで譲渡した場合、その譲渡は無効ですので、株式譲渡について問題が発生する可能性があります。

について詳しく説明します。
 まず原則として、株券発行会社は株式発行後遅滞なく株券を発行しなければならない(会社法215条1項)と規定されています。しかし、株式譲渡制限会社においては、株主から請求がある時まで株券を発行しないことができます(会社法215条4項)。また、株券不所持の申出(会社法217条)があった場合も株券を発行する必要はありません。
ですから、株券を発行しなくても何も問題が起きないということも考えられます。しかし、もし株主から株券発行を請求された場合は発行しないといけないですし、で記載したように株式を譲渡するためには株券を交付しないといけないので、譲渡の前には株券を発行してもらう必要があります。よって、株券を発行しないといけない事態があり得るのです。

《注》株式の発行と株券の発行は意味が違います。

②についての問題は、取締役を3人以上確保しないといけないということです。旧商法時代は、そのために名前だけの取締役になってもらうということがありました。現在でも上記のような会社は同様です。
会社法では、株式会社であっても取締役会を設置しないこともできますので、取締役が3人もは必要ないという会社なら、定款を変更して「取締役会設置会社」を廃止し、その旨登記すればOKです。但し、少々注意すべき問題はありますが・・・。

③についての問題も②と同様です。会社法では、監査役を置かないことも可能ですので、監査役は本当は不要だという会社は、②と同様に定款を変更して「監査役設置会社」を廃止し、その旨登記すればOKです。ただ、「取締役会設置会社」は原則として監査役を置かないといけないので、「取締役会設置会社」をそのままにして「監査役設置会社」だけ廃止することは現実的ではありません。

2018年11月25日